ホストクラブの開業を考えている方、あるいは現在ホストクラブを経営している、任されている方は『風営法』について知っておく必要があります。
なぜなら風営法を守らないと最悪の場合、懲役や過料といった刑事処分、営業停止といった行政処分が科されてしまうからです。
“ホストクラブの営業許可を名義貸し 風営法違反の疑いで男4人を逮捕 店から現金3000万円を押収”
引用:CBCテレビ
なお大前提としてホストクラブの経営には、適切な届出・許可を提出する必要もあります。
これらを踏まえて、この記事では風営法に則った健全なホストクラブを開業・経営するためのポイントをご紹介します。
正しい知識を身につけることが自分や家族、働いている従業員、または財産や信用などを守ることにつながるので、ぜひ最後までご覧ください。
風営法上のホストクラブとは?営業形態と許可の要件
風営法は正式名称を「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」と言い、ホストクラブの開業や経営をおこなううえで守らなければいけない法律です。
そして、この風営法は下記の引用にあるとおり、店舗の周辺環境や子どもの健全な育成に悪影響を与えないことを目的としています。
“この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。”
引用:e-Gov法令検索 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (第1章・第2条)
これらの目的があったうえで、風営法では対象となる店舗を業態や業種ごとに「風俗営業」と「性風俗関連特殊営業」に分けています。
わかりやすく言うと、ホストクラブやキャバクラなどを「風俗営業」、デリヘルやソープなどを「性風俗関連特殊営業」と定義しています。
さらに風俗営業の中でも「接待飲食等営業(1号~3号)」「遊技場営業(4号~5号)」に分かれ、ホストクラブは接待飲食等営業の1号営業に該当します。
形態は接待飲食等営業で風営法1号の許可が必要
先ほどお伝えしたとおり、ホストクラブは接待飲食等営業の1号営業という扱いになります。
1号を含む各詳細については以下のとおりです。
【接待飲食等営業の種類】
・1号(料理店、社交飲食店)
設備を設けて客を接待し、遊興や飲食も伴う(例:ホストクラブ、キャバクラなど)
・2号(低照度飲食店)
設備を設けて客に飲食をさせ、客席における照度を10ルクス以下(例:暗めの居酒屋やバー)
・3号(区画席飲食店)
設備を設けて客に飲食をさせ、他から見通すことが困難かつその広さが5平方メートル以下である客席を設けている(例:個室居酒屋)
注目すべきは1号営業の接待の部分です。ホストクラブでは、ホストがお客様の横に座って接客をおこないます。
この営業形態が風営法に照らし合わせると1号に分類されるというわけです。
風俗営業許可の要件
ホストクラブやキャバクラ、居酒屋など、これらの店舗を営むにあたって、業種に応じた届出を管轄する都道府県公安委員会に提出して許可を取る必要があります。
この許可の要件として「申請者に関する要件」「開業場所に関する要件」が挙げられます。
人と場所、それぞれどのような要件を満たす必要があるのか。「私は許可が取れるのか?」といった疑問をこの章で解決していきましょう。
申請者に関する要件
営業の許可を得るにあたって、「申請者=人」に対する調査や審査がおこなわれます。
風営法の第2章・第4条にて、後述する要件に当てはまる人の届出を許可してはならないと定められているからです。
“公安委員会は、前条第一項の許可を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当するときは、許可をしてはならない。”
引用:e-Gov法令検索 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 (第2章・第4条)
具体的にどのような人かと言うと……
・破産手続き中の人
・1年以上の懲役、あるいは禁固刑に処されてから5年が経過していない人
・集団的に、あるいは常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為をおこなう恐れのある人
・アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者
・心身の故障により風俗営業の業務を適切に実施できないと見なされる人
・風俗営業の許可を取り消されてから5年が経過していない人
・営業に際しての能力を有さない未成年者
など
これらは欠格事由、あるいは人的欠格事由と呼ばれ、一つでも当てはまると許可を取得できません。
営業の許可を取るには、これらの要件に引っかからない人が前提条件となるのです。
開業場所に関する要件
「欠格事由に当てはまらないから届出の許可も問題ないだろう」と人の要件のみで判断するのは危険です。
届出の許可は開業場所も考慮して可否されます。というのも風俗営業が認められている地域(場所)は風営法によって制限されています。
たとえば、都市計画法の用途地域にて、住宅系に当てはまる地域・場所でのホストクラブの営業許可は下りません。
さらに保全対象施設の100m以内でのホストクラブの営業も禁止されています。保全対象施設とは、わかりやすく言うと学校や病院、図書館、児童福祉施設などが挙げられます。
もし賃貸契約を結んだ物件が用途地域の住宅系に当てはまってしまった、あるいは学校や図書館といった保全対象施設の100m以内だったといった場合は大損失です。
営業許可が下りないということは開業もできないため、準備した物件の敷金や礼金、家賃、内装、什器など掛かった費用がすべて無駄になる恐れも……。
そうならないためにも、徹底した調査をおこなったうえで開業場所を決定する必要があります。
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風営法に準拠したホストクラブを経営するポイント
ホストクラブを開業・経営するにあたって、風俗営業の許可を得る、風営法を守るなどが必須事項となります。
では風営法に準拠したホストクラブを経営するためのポイントとは何なのかと言うと……
・営業時間は1部が深夜0時まで、2部は日の出から
・箱の入口に「18禁」を表示して18歳未満を入店させない
・18歳以上かつ20歳未満のお客さんに飲酒、喫煙させない
・悪質な客引き(キャッチ)をしない
・他人が取得した営業許可を基に営業(名義貸し)しない
・都道府県の条例で定められた数値以上の騒音・振動を出さない
・風俗営業の許可証(原本)を店内の分かりやすい場所に設置
・店内の照明は読書できる程度の明るさ(5ルクス以上)
・複数の客室がある場合は1室につき16.5平米以上の床面積を確保
・店内環境に関するその他のポイント
・体入でも身元確認を徹底して18歳未満を就労させない
・外国人キャストの雇用は対象者のビザに注意
・プレイヤー、内勤を問わず全員分の従業員名簿を作成
ここからはこれらの覚えておきたいポイントを「営業方法」「店内の向上や設備」「スタッフ雇用」の3つに分けて説明していきます。
営業方法について
営業方法に該当する覚えておきたいポイントは全部で7つです。
営業時間は1部が深夜0時まで・2部は日の出から
端的に言えば、ホストクラブは深夜0時から朝6時までの間の深夜営業が禁止されています。
よって営業可能時間は、1部であれば深夜0時まで、2部であれば日の出からの営業が可能というわけです。
ただし都道府県の条例にて「営業時間延長地域」と定められている地域は、例外的に深夜1時までの営業が認められる場合もあります。
たとえば東京都新宿区歌舞伎町一丁目、同二丁目、北新宿一丁目など。ただしこれらの地域であっても住居用途地域から半径20m以上離れている必要があります。
詳しくは「営業時間延長地域 地域名」で検索し、各警察署が公開している営業時間延長地域を確認してみましょう。
箱の入口に「18禁」を表示して18歳未満を入店させない
ホストクラブの経営に際し、店舗の入口といった目の付く範囲内に年少者の立ち入りを禁止する表示、簡単にいうと18歳未満の入店お断りを何らかの方法で示す必要があります。
これは風俗営業許可の申請手続きにおいてもどのような対策を講じるか、また店舗検査の際にもちゃんと掲示されているか確認されます。
というのも風営法では「少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する」といった少年や年少者を守る意図を含んでいます。
具体的には「18歳未満を入店させない」「18歳未満に接待させない」など。もしこれらを破った場合、経営者は厳しい処罰を受けるので、必ずホストクラブの入口に18禁を表示しましょう。
18歳以上かつ20歳未満のお客さんに飲酒・喫煙させない
20歳未満のお客様、または従業員に飲酒や喫煙はさせないようにしましょう。
風営法では未成年者への酒やたばこの提供を禁止しています(風営法第22条・第1項・第6号)
18歳以上であれば店内への入店、あるいは接待業務は認められています。ただし、お酒やたばこは20歳からです。
もしこれを破ってしまうと、経営者は1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金、あるいはそのどちらも科せられてしまいます。
悪質な客引き(キャッチ)をしない
歩行者にしつこく付きまとったり、行く手を遮ったりといった悪質と捉えかねない客引き(キャッチ)はしないようにしましょう。
風営法第22条・第1項・第2号にあるとおり「当該営業に関し客引きをするため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと」を禁止しています。
もしこれを破ってしまうと6ヶ月以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金が科せられます。
客引きとして許される範囲は、店舗敷地内で歩行者に看板を見せる、道路使用許可を得たうえでのビラ配りまででしょう。
ただし歩行者に積極的に声をかけたり、興味を持った人を店舗まで誘導したりすると客引き行為に該当する恐れがあります。このあたりの線引きは難しいですね。
他人が取得した営業許可を基に営業(名義貸し)しない
他人が取得した営業許可を基に営業をしない、あるいは自身が取得した営業許可を基に他人に経営を任せるという行為は風営法の第11条によって禁止されています。
これは「名義貸し」とも呼ばれています。もし発覚した場合は名義人・経営者の双方が罪を問われます。
たとえば、貸した側には2年以下の懲役か200万以下の罰金のどちらか、もしくは両方。借りた側は無許可営業の罪として、貸した側と同じ罰が科せられます。
都道府県の条例で定められた数値以上の騒音・振動を出さない
営業者は各都道府県の条例で定められた数値以上の騒音・振動を出してはならないと風営法にて定められています(風営法第14条)。
たとえば東京都の場合、騒音は住居系用土地を除き50デシベルから60デシベル。振動は時間帯に関わらず都内全域で55デシベルまでとされています。
都道府県ごとに見てみると、騒音は大体40デシベル~60デシベル、振動は55デシベル前後と設定している地域が多いです。
とは言え、開業・経営の際には騒音・振動の定められた数値を自分の目でしっかりと確認しておきましょう。
風俗営業の許可証(原本)を店内の分かりやすい場所に設置
風俗営業の許可証の原本を店内のわかりやすい場所に掲示しましょう。こちらも風営法第6条にて定められているものです。
警察や行政などの立ち入りの際に許可証が掲示されているか必ず確認が入ります。もし掲示されていなかった場合、許可証掲示義務違反として罰金や指示処分などの対象となる恐れがあります。
風俗営業の許可申請をおこない、無事に認められると公安委員会から許可証が交付されるので、必ず渡された許可証の原本を掲示しましょうね。
店内の構造や設備について
店内の構造や設備に該当する覚えておきたいポイントは全部で3つです。
店内の照明は読書できる程度の明るさ(5ルクス以上)
営業許可を得て営みをおこなう店舗には照明の明るさ(照度)に対しての基準値が設けられています。
照度はルクスという単位で表示され、ホストクラブが該当する風俗1号営業の基準値は5ルクスです。
具体的には店内で読書ができる程度の明るさ。照度の測り方は専用機器のほか、アプリでも可能です。
複数の客室がある場合は1室につき16.5平米以上の床面積を確保
ホストクラブを含む風俗1号営業では、1つの客室に対する面積に対しても厳格な基準値が設けられています。
具体的には1室につき16.5平米以上の床面積を確保しなければなりません。VIPといった個室を複数設ける場合は、1室が16.5平米以上になるよう設計する必要があります。
なお客室が1室の場合、簡単にいうと1つのフロアであれば規制されないとされています。
もしこの面積を確保できていなければ、そもそもの風俗営業の許可を取得できません。
店内環境に関するその他のポイント
照度や床面積以外にも店内環境に対するポイントとしては以下が挙げられます。
・客室の内部が外部から容易に見通せないこと
・客室内部に見通しを妨げる設備を設けないこと
・善良の風俗、清浄な風俗環境を害するような写真、広告物、装飾等を設けないこと
・客室の出入口に施錠の設備を設けないこと
・ダンスのための構造や設備がないこと
ホストクラブ経営者はこれらの基準を意識したうえで物件探しや内装を含む設計依頼をおこなう必要があります。
もし1つでも基準を守れていない項目があると、営業許可は取れませんし、再工事となり追加費用が発生してしまいます。
また、VIPルームの新設を含むホストクラブのリニューアルの際もこれらの点には注意が必要です。
スタッフの雇用について
スタッフの雇用に該当する覚えておきたいポイントは全部で3つです。
体入でも身元確認を徹底して18歳未満を就労させない
体験入店(体入)、あるいは体入をせず本入店する場合も本人確認を徹底して18歳未満を就労させないようにしましょう。
先ほども触れたとおり、風営法では18歳未満による接待や接客は禁止されています。
もし18歳未満を就労させ、これが発覚した場合は行政処分や1年以下の懲役、あるいは100万円以下の罰金やそのどちらの刑も背負うことになります。
よって従業員を雇用する際は、必ず厳しく本人確認をおこないましょう。
外国人キャストの雇用は対象者のビザに注意
もし外国人をキャストや内勤を含む従業員として雇用する場合、対象者のビザに注意が必要です。
具体的には下記のようなビザを持っている外国人であれば雇用が可能とされています。
・永住者
・特別永住者
・定住者
・日本人の配偶者等
・永住者の配偶者等
パスポートや在留カード、外国人登録証明書などの本人確認書類を必ずチェックし、コピーとともに従業員名簿として保管しましょう。
もし雇用してはいけない外国人を雇ってしまった場合、雇用主となるホストクラブの経営者は不法就労助長罪として3年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金、あるいはその両方が科せられます。
プレイヤー・内勤を問わず全員分の従業員名簿を作成
ホストクラブを含む風俗1号営業には従業員名簿(従業者名簿)の作成が求められます。
従業員名簿とは、店舗で働く従業員の詳細を記した書類。記載すべき内容・項目は以下のとおりです。
・住所
・氏名
・性別
・生年月日
・採用年月日
・退職年月日
・従事する業務の内容
・確認書類を確認した年月日
またこれらを証明するためのパスポートや本籍地が記載された運転免許証などのコピーを確認書類として添付する必要があります。
名簿を用意していない、必要な記載や書類が漏れている、虚偽の記載がされているなどが発覚した場合、10日以上80日以下の営業停止(基準期間20日)処分、100万円以下の罰金といった厳しい処分が下される恐れがあります。
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ホストクラブの経営で風営法に違反した際のペナルティ
ホストクラブを経営するにあたってなぜ風営法を意識しなければならないのか?
もし風営法に違反した場合、経営者は「刑事処分」や「行政処分」の恐れがあるからです。
ここでは違反してしまった際に受ける恐れのあるペナルティを説明します。
懲役・過料などの刑事処分
刑事処分とは、刑事事件を起こした人物に科される刑罰のことです。
具体的な刑罰内容としては、罰金、懲役、禁固などが挙げられます。
最も重い風営法の違反行為としては、無許可営業、名義貸し、営業停止命令の無視、禁止地域での営業、不正な方法での営業許可の取得など。
これらの違反行為が認められた場合、2年以下の懲役、あるいは200万円以下の罰金、またはこの両方が科せられます。
そのほか、18歳未満の接待行為や承認なしの店内構造の変更、悪質な客引き行為など、風営法で定めている条約への違反行為も同様に、6ヶ月〜1年以下の懲役、あるいは100万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられます。
営業停止・許可取り消しなどの行政処分
行政処分とは、警察によって違反を調査し、その違反内容を基に公安委員会が許可の取消しや営業停止、指示処分といった処罰を指します。
処分の重さで見ると、許可の取消し>営業停止>指示処分の順となります。
違反内容によってはまず指示処分が下されることもあれば、指示処分なしの一発での営業停止や許可自体の取り消しを言い渡される可能性もあります。
指示処分の対象となる違反行為としては、許可証を店内に掲示していなかった、変更に際して提出しなければならない書類が漏れていたなど。
これらに対しては指示処分といった形で改善を促されるのみに留まることがあります。指示処分は違法行為の改善を促すものなので、罰金や懲役といった刑罰が科せられるわけではありません。
一方で名義貸しをしてしまったり、18歳未満をお客様として入店を許してしまったり、これらの違反行為に対しては許可の取り消しや営業停止を言い渡される可能性があります。
最悪のケースとして行政処分だけではなく、刑事処分も同時に科されてしまう恐れも。
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まとめ:風営法を則った健全なホストクラブを開業・経営しましょう
ホストクラブは風営法が定める風俗営業>接待飲食等営業>1号に該当します。
経営者は主に以下の13の項目を守らなければなりません。
・営業時間は1部が深夜0時まで、2部は日の出から
・箱の入口に「18禁」を表示して18歳未満を入店させない
・18歳以上かつ20歳未満のお客さんに飲酒、喫煙させない
・悪質な客引き(キャッチ)をしない
・他人が取得した営業許可を基に営業(名義貸し)しない
・都道府県の条例で定められた数値以上の騒音・振動を出さない
・風俗営業の許可証(原本)を店内の分かりやすい場所に設置
・店内の照明は読書できる程度の明るさ(5ルクス以上)
・複数の客室がある場合は1室につき16.5平米以上の床面積を確保
・店内環境に関するその他のポイント
・体入でも身元確認を徹底して18歳未満を就労させない
・外国人キャストの雇用は対象者のビザに注意
・プレイヤー、内勤を問わず全員分の従業員名簿を作成
もしこれらに対する違反行為が発覚した場合、懲役や罰金と言った刑事処分・営業停止や許可の取り消しといった行政処分が科されてしまいます。
ホストクラブの開業を考えている方、現在ホストクラブを経営している方、任されている方はこれらの風営法を頭に入れたうえで営業をおこないましょう。