ほとんどのホストクラブには「罰金制度」があります。
罰金制度はホストクラブの健全な経営のために重要なシステムであり、さまざまなケースで罰金が発生しますが、罰金制度について詳しく知らないという方もいるでしょう。
そこで、本記事ではホストクラブの罰金制度について詳しく解説します。
罰金が発生するケースや注意点もあわせて紹介しますので、ぜひ最後までご確認ください。
ホストクラブの罰金制度の概要
ホストクラブの罰金制度はホストに対して課せられるものであり、「ホストへの戒め」と「お店への損害防止」の2つを主な目的として設けられています。
ホストが遅刻や欠勤をしてしまうと、ホストクラブに来店するお客さんに迷惑がかかり、お店の売上にも大きな影響が及びます。
こうしたリスクを防ぐために、罰金制度を設けて職場全体の緊張感が薄れないようにしているのです。
ただし、すべてのホストクラブが罰金制度を設けているというわけではありません。
中には罰金制度を設けておらず、罰金なしをウリにして求人を出しているお店も多く存在します。
ホストクラブの罰金制度は法律的にOK?
そもそもホストクラブの罰金制度は法律的にOKなのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、ホストクラブの罰金制度について法律的な観点から解説します。
法律的には問題ない場合が多い
労働基準法16条において、従業員に対して罰金を課すことは禁止されています。
また、労働基準法91条では「罰金として請求できる金額は、給料支払い金額の10%まで」と定められています。
しかし、この法律が適用されるのは会社に雇用された労働者のみです。
ホストクラブで働くホストは基本的に個人事業主となるため、上記の法律は適用されません。
よって、ホストクラブで罰金制度を設け、ホストに罰金を課すことは法律的に問題ない場合が多いのです。
ホストは労働者に当てはまるという法的観点もあるため注意
ホストは基本的に個人事業主なので罰金を貸しても法的には問題ないケースがほとんどですが、労働基準法が定める「労働者」の定義を満たしている場合はその限りではありません。
労働基準法における「労働者」の定義は、「職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」とされています。
そのため、契約上は「個人事業主」となっていても、上記の定義に当てはまる場合は労働者としてみなされ、違法となるケースもあります。
また、万が一ホストから訴えられたり労働基準監督署からの指摘が入ったりした場合は、お店側の非が認められる可能性もあるので注意しましょう。
ホストクラブで罰金が発生するケース
ここからは、ホストクラブで罰金が発生するケースについて解説します。どんなケースが当てはまるのか、ぜひチェックしてみてください。
遅刻
ホストは基本的にタイムカードで勤怠管理が行われます。
そのため、出勤時間が1分でも過ぎたら遅刻扱いです。
ホストが遅刻をするとお客さんに迷惑がかかるとともに職場全体の緊張感が薄れてしまい、周囲に悪影響を及ぼします。
こうした理由から、遅刻に対して厳しく罰金を設けているお店は非常に多いです。
遅刻における罰金の金額はお店によって異なりますが、1,000円~1万円が相場といわれています。
当日欠勤・無断欠勤
当日欠勤や無断欠勤は遅刻よりも重い罰金が科せられます。
欠勤をすると当日の人員が減るため、お店の売上が大きく減少してしまいます。
また、ホストクラブは基本的にお客さんの入りを予想してシフトを組むので、ホストが1人でも欠勤するとお店が回らなくなる可能性もあるでしょう。
当日欠勤・無断欠勤における罰金の相場は、3万円~5万円と高めです。
ただし、無断欠勤の場合はそのまま飛んでしまうホストが多いので、実際に罰金を支払う人は少ないでしょう。
一方、当日欠勤でもお店にしっかり連絡をすれば罰金を科せられないケースもあります。
爆弾行為
爆弾行為とは、ホスト業界で暗黙のルールとなっているあらゆる違反行為を指します。
たとえばホスト業界では、ホストを一度指名すると退店するまで変更できない「永久指名制」が採用されています。
よって、指名ホストがいるお客さんに対して連絡先を聞いたり肉体関係を結んだりするのは絶対にNGです。
また、他のお客さんやホストの情報を漏らしたり、暴力沙汰を起こしたりすることも爆弾行為に当てはまります。
これらの爆弾行為はホスト業界においてもっともやってはいけない行為であり、爆弾行為を行ってしまうと非常に重い罰金を請求されるようになります。
爆弾行為における罰金の相場は、50万円~100万円とかなり高額です。
最悪の場合、お店をクビになることもあります。
お店への損害も大きくなるので、ホストが爆弾行為を行うことのないように日頃から注意喚起をすることが大切です。
ノルマの未達
お店によってはノルマが設定されており、ノルマを達成できない場合は罰金を請求される可能性があります。
たとえば、バースデーやクリスマスといったイベント日には、決められた人数以上の指名客を呼ばなければならない「強制指名日」が設けられるケースが一般的です。
ノルマを達成できない場合の罰金の相場は、日給の半分程度にあたる5,000円~1万円と高めです。
ただし、個人ではなくチーム全体でノルマが設定されているお店や、そもそもノルマを設定していないお店もあります。
売掛の未回収
売掛とは、お客さんが飲食代の支払いができなかった場合にホストが立て替えるシステムのことです。
いわゆる「ツケ払い」であり、お客さんの売掛金を回収できないとホストが自分で負担することになります。
そのため、ホストは必死に売掛金を回収しようとしますが、それでもお客さんに逃げられてしまうケースもゼロではありません。
売掛を回収できなかった場合、新たに罰金を請求されるというわけではありませんが、回収できなかった分が「借金」として給料から天引きされることになります。
また、給料よりも売掛の未回収分のほうが金額が大きければ、差額分を支払わなければなりません。
結果として、罰金と同じくホストにとっては大きな負担となるでしょう。
売掛金の回収方法について詳しく知りたい方はこちらもぜひチェックしてみてください。
別グループ・別店舗への移籍
ホストが別グループ・別店舗へ移籍すると、罰金が発生するケースがあります。
労働契約法によって企業に務める従業員には「競業避止義務」が定められています。
競業避止義務とは、使用者と競合する企業への就職を行わない義務のことです。
よって、ホストが別グループ・別店舗へ移籍することは競業避止義務の違反にあたります。
指名客がついているホストが別グループ・別店舗へ移籍してしまうとお店の売上が減少してしまうので、移籍防止のために罰金を設けているのです。
ただし、移籍によって発生した罰金はホスト自身が支払うのではなく、移籍先のお店が肩代わりしてくれることが多いです。
なお、移籍という行為すべてに対して罰金が発生するわけではなく、「無断での移籍禁止」「入店後○年まで移籍禁止」というようにルールを設けているお店もあります。
また、移籍によって罰金が発生するのはお店の売上を大きく左右する人気のホストだけで、売れていないホストは罰金が発生しないケースもあるようです。
営業時間外の接客
風営法により、ホストクラブの営業時間は午前0時まで(一部地域は午前1時まで)と決められています。
その時間を超えて営業してしまうと風営法違反にあたり、最悪の場合は営業停止になるリスクもあるのでお店側としては絶対に避けなければなりません。
よって、営業時間外の接客を行った場合は罰金が請求されるケースがあります。
営業時間外の接客では1分1万円といった厳しい罰金が設けられていることもあり、ホストに多大な負担がかかります。
そのため、お客さんを上手く誘導しながら閉店時間までに退店してもらうように接客することが担当ホストの重要な役割でもあるのです。
その他
ホストクラブではさまざまなケースで罰金が発生しますが、上記で紹介したほかにも罰金が発生するケースがあります。
たとえば、ホストクラブでは定期的にミーティングが開催されますが、ミーティングに参加しないと5,000円~1万円程度の罰金が発生する可能性があります。
ミーティングは個人の目標や売上発表などを行う場なので、参加しないと売上に貢献する気がないとみなされます。
また、開店前や閉店後の清掃、大掃除などに参加しないと10万円程度の罰金が請求されるケースや、お店で使用するグラスを割ったらグラス代を弁償するケース、チーム成績が悪かったら数万円の罰金が発生するケースなどもあります。
お店によって設けられている罰金は異なりますが、いずれもお店の売上や人に迷惑をかける行為に対して罰金が発生するという点では変わりません。
以下の記事ではホストクラブで起きるトラブルをまとめていますので、あわせてチェックしてみてください。
罰金制度に関する注意点【経営者向け】
ホストクラブの罰金制度は法的に問題ないケースがほとんどですが、罰金制度を設ける際はいくつか注意しなければならないポイントがあります。
最後に、経営者向けに「罰金制度に関する注意点」を3つ解説します。
トラブルに発展しないためにも、しっかり頭に入れておきましょう。
罰金制度については事前に従業員に注意喚起を行う
罰金制度はホストの意識改革のためにも非常に重要な役割を担っています。
とはいえ、罰金はそもそも発生しないに越したことはありません。
しかし、ホスト業界においてどういう行為がタブーなのか、どういうケースで罰金が発生するのかを理解していないホストも多いでしょう。
罰金に対して意識が低いホストもいるため、罰金制度について事前に注意喚起を行う必要があります。
どのような場合に罰金が発生するかを、契約時はもちろん日常的に注意喚起してホストの意識を高めることが大切です。
また、トラブル防止のためにも、罰金に関する内容を契約書に明記し、同意を得てから雇用するようにしましょう。
重大な違反行為にはホストの解雇・法的措置も検討する
迷惑行為をしたホストには罰金を請求することでその後の意識改革が期待できますが、それでも迷惑行為を繰り返したり重大な違反行為をしたりする場合は、そのホストの解雇や法的措置も検討する必要が出てきます。
たとえば、遅刻や欠勤を何度も繰り返したり、ホストやお客さんを殴るといった暴力沙汰を起こしたり、ルールを守らずお店に損害を与えるホストはお店にとって迷惑な存在でしかありません。
ホストが重大な違反行為をするとお店の売上が減少するだけでなく、お店の評判を下げたり他のホストやお客さんにも迷惑をかけることになります。
不利益を出し続けるホストに対しては、必要に応じて罰金よりも厳粛な対応を取ることも検討しましょう。
不当に高額な罰金の請求はタブー
罰金を請求すること自体は違法とならないケースがほとんどですが、不当に高額な罰金を請求することはタブーとなります。
そのため、事前に決定した合理的な金額以上の罰金は徴収しないようにしましょう。
ホストの違反行為によってお店に損害が出たことを理由に多額な損害賠償を請求してしまうと、逆にホストに訴えられる可能性もあります。
また、罰金を請求する際に恫喝や恐喝、脅迫などの犯罪行為を行ってしまった場合、告発されるおそれもゼロではありません。
悪質店として摘発される事態になりかねないため、罰金を請求する際は細心の注意を払うようにしましょう。
まとめ:ホストクラブの罰金制度は合法!ただし高額な請求には注意
ホストクラブの罰金制度は、ホストクラブの健全な運営のために重要な役割を果たす制度です。
一般的にホストクラブの罰金制度は違法にはあたらないので、ホストの迷惑行為に対して罰金制度を設けるお店も多く存在します。
ケースに応じて罰金の金額も異なるため、ホストを雇用する際は契約時に必ず罰金制度について説明し、相手の同意を得るようにしましょう。
ただし、高額な罰金を請求するのはNG。ホストに訴えられたり告発されたりするリスクがあるので、罰金を請求する際は合理的な金額を超えないように注意する必要があります。
罰金制度を正しく理解して、健全なホストクラブの運営に務めていきましょう。