さまざまな業種でインバウンド市場の活性化が注目されていますが、ホスト業界も例外ではありません。
日本のホストクラブは海外でも人気があり、観光スポットとして訪れる外国人旅行客が増えています。
そこで本記事では、ホスト業界のインバウンド市場について詳しく解説します。
ホストクラブのインバウンド事情の現状から今後の動向を考察。加えて、効果的なインバウンド集客方法や海外の業態から得られる営業のヒントなどもご紹介します。
読めば「ホスト業界のインバウンド市場に商機はあるのか」「インバウンド集客は何をすればよいか」が分かるはずです。
ホスト業界のインバウンド市場が気になる方は、ぜひ本記事をご覧ください。
ホストクラブは外国人観光客から人気がある
実はホストクラブは海外で、日本独自の文化として認知が広まっています。
歴史ある日本文化として取り挙げている海外メディアや日本の観光ガイドもあるほどで、海外ではあまり見られない業態やサービスの珍しさが理由のひとつです。
また煌びやかで華やかなホストクラブは写真や動画で拡散されやすく、近年だとSNS上で認知を拡大しています。
加えて、日本の漫画やドラマで描かれていることもあり、ホストクラブに憧れているという外国人も増えているそうです。
そのため日本人にとっては見慣れているホストクラブですが、外国人からすると希少で日本に訪れた際にはぜひ見ておきたい観光スポットとして人気があります。
海外にホストクラブのような業態はあるのか?
ホストクラブは日本の文化として海外で認知されていると説明しましたが、類似したサービスが全くないのかは気になるところでしょう。
海外にはホストクラブのような業態があるのかについて、詳しく解説します。
海外にホストクラブはほとんどない
結論として、海外にはホストクラブ自体がほとんどありません。
なぜならホストクラブで提供している「男性からのおもてなし」というサービスは、海外では全く需要がないからです。
女性に対して「エスコート・レディーファースト・サプライズ」などをするのは、西洋の男性からすると当たり前です。
女性のためにドアを開けたり椅子を引いたり、上着の着脱を手伝ったり花束を渡したりと。海外では日常的に見られる光景です。
そのためサービス自体には新鮮味がなく、価値を感じづらいでしょう。
しかし日本人と近い感覚を持つアジア圏では、近年だとホストクラブの進出が見られます。
ただしランキング制度がなかったり個室で接客をしたり料金設定が違ったりと、日本のホストクラブとは様相が異なるようです。
女性用風俗・ストリップクラブが主流
海外の女性向けのサービスは、女性用風俗やストリップクラブが主流です。
女性用風俗はデリヘルのような業態が多く、一般的に利用されている傾向。さらに男娼が街頭に立っているという国もあり、日本と比べると女性向けの売春が活発です。
また海外のストリップクラブでは、セクシーな衣装に身を包んだ男性が官能的な踊りを披露すして女性をおもてなしします。
売春が合法・非合法かも関係ありますが、総じて日本と比べて刺激が強いサービスが人気があります。
インバウンド集客に対するホスト業界の現状と今後の動向
ホスト業界のインバウンド市場を見ると、既にインバウンド対策に取り組むホストクラブは数年前から存在しているというのが現状です。
しかしコロナや円安の影響もあり、ここ数年で日本のインバウンド市場は激変しています。そのためインバウンド集客に取り組むべきか、悩んでいるという方もいるでしょう。
そこで本章では、ホスト業界のインバウンド市場の現状と今後の動向まで解説します。
インバウンド対策に取り組むホストクラブが増加
訪日外国人客の増加に伴うインバウンド市場の活性化を受け、ホスト業界でもインバウンド対策が見られるようになったのは2017年・2018年ごろです。
インバウンド対策に取り組むホストクラブが、メディアで取り上げられて注目されるようになりました。
特に目立ったのは大手グループのホストクラブです。
「冬月グループ」では外国人向けのサイトやサービスを新しく設けたり、「愛本店」は多言語対応の広告を展開したりと、インバウンド対策に取り組むホストクラブが増加。
さらにはインバウンド向けのホストクラブが誕生するほどで、ホスト業界的にインバウンド対策に取り組む動きが見られるようになります。
ホスト業界を含むインバウンド市場は回復・拡大傾向にある
2020年からコロナ渦に突入して訪日外国人客数が激減し、インバウンド市場は大幅に縮小しました。
日本政府観光局(JINTO)が公表した訪日外国人旅行者数の推移を見ると、訪日外国人旅行者数は2019年の約13%まで落ち込んでいます。
出典:日本政府観光局(JINTO)
しかしコロナ渦が終わった2022年から、大幅な右肩上がりで訪日外国人客数が増加。2023年にはコロナ前(2019年)の約79%まで回復しました。
今後、ホストを含むさまざまな業界でインバウンド市場の回復・拡大が予想されます。
ホストクラブの認知拡大に伴い外国人客の増加が予想される
日本のホストクラブは海外メディアでの露出や観光ガイドの案内に加えて、近年だとSNSでの拡散により認知を拡大しています。
ホスト経歴のあるYouTuberの登場やホスト関連のニュースが話題を呼び、ホストクラブ人気は高まっている傾向です。実際に、外国人のホストクラブ利用者数も増えていると言います。
さらに前述した訪日外国人客数の回復・拡大傾向も相まって、今後はインバウンド対策に取り組むホストクラブは増えていくでしょう。
そうなるとインバウンド集客に取り組むホストクラブの競争により、外国人向けのサービスの質が向上。
利用した外国人の満足度が高くなれば、口コミを通じてますます利用者数が増えていくと予想されます。
ホスト業界のインバウンド市場はさらに活性化していくでしょう。
ホストクラブに外国人客を取り入れるメリット・デメリット
インバウンド対策に取り組むホストクラブが増えている一方で、外国人客の利用を断っているお店もあります。
なぜなら外国人客を取り入れることは、お店にとってメリットだけではないからです。
本章では外国人客を取り入れるメリット・デメリットをご紹介します。メリット・デメリットを把握したうえで、インバウンド対策に取り組むかを検討してみてください。
メリット/売上向上に期待できる
外国人客を取り入れる最大のメリットは、売上の向上に期待できることです。
日本人客に加えて国外のお客さんもターゲットになるので、単純に利用客数が増加します。
また訪日外国人利用客は客単価が高い傾向にあり、親族や友人と団体で利用する場合も少なくありません。
そのため上手く外国人客を集客できれば、大幅な売上向上が見込めるでしょう。
デメリット/受け入れ準備の手間や言語の壁によるトラブルのリスク
外国人客を取り入れるデメリットには、受け入れ準備にかかる手間や費用、言語の壁により生じるトラブルのリスクが挙げられます。
例えば、多言語に対応できるスタッフの確保・育成やキャッシュレス決済の導入、インバウンド向けの集客施策などには少なくないリソースが必要です。
また言葉の壁により料金やルールの伝達が難しいため、トラブルを引き起こす可能性も高くなるでしょう。
お酒の料金や可能な決済手段が誤って伝わってしまったり、年齢確認を誤って18歳未満の客を入店させてしまったりなど。
外国人客を取り入れるなら、デメリット面についても把握しておきましょう。
外国人客へのアピール・集客方法
ホスト業界のインバウンド市場の活性化を受けて、新たにインバウンド対策に取り組もうと考えているホストクラブ経営者の方もいるのではないでしょうか。
本章では、ホストクラブにおける外国人客へのアピール・集客方法をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
外国語で接客できるホストの求人・育成
外国語で接客できるホストの在籍は、訪日外国人客へのアピールになります。
なぜなら言語が通じることは旅行客がお店を選ぶ理由にもなるからです。
そのため外国語を習得しているホストの求人・育成をするのも、インバウンド集客の方法としては効果的です。
実際に多言語に対応できるホストが在籍していたり、幹部向けに英会話レッスンを実施していたりするホストクラブの例もあります。
それにホストクラブのサービスは、会話によるおもてなしがメインです。当然ながら言語が通じるホストが接客をした方がサービスの質が高く、満足度も高まるでしょう。
こちらの記事では、ホストクラブの人材育成について具体的な手法や実例をご紹介しています。人材育成を課題に感じているホストクラブ経営者の方は、ぜひ合わせてご覧ください。
多言語対応のウェブサイトを制作する
他言語対応のウェブサイトを制作することで、ネットを活用して情報収集を行う外国人客へ自店をアピールできます。
実例として、大手ホストグループの「Smappa!Group」では訪日外国人向けのサイトがあったり、「冬月グループ」では過去にグローバルサイトを制作していたりします。
Smappa!Groupの外国人向けサイトでは、他言語対応スタッフの紹介、プランやホストクラブ・グループの説明等を外国語で表記しています。
自店の魅力や強みを伝えるうえでも、多言語対応のウェブサイトは非常に有用です。
訪日外国人向けのサービスを展開する
外国人客へのアピール・集客方法の手段のひとつとして、訪日外国人向けのサービス展開も効果的です。
外国人向けにホストクラブの魅力を楽しめるサービスをコースとして設けることで、インバウンド集客に成功しているホストクラブの実例もあります。
例えば「Smappa!Group」では歌舞伎町付近までお客さんを迎えに上がり、お店までの案内からホストクラブでのサービス体験をセットにしたプランを設けています。
また「冬月グループ」が過去に実施していた中には、アテンド通訳の派遣と外国人に人気のある「シャンパンコール」体験をセットにしたコースがありました。
このように訪日外国人のニーズに合わせてホストクラブを体験できるようなサービスを考案すれば、競合にはないウリとして集客効果が見込めます。
多言語に対応した広告の掲載
歌舞伎町をはじめホストクラブが多い繁華街は、観光地としても有名で多くの訪日外国人客が訪れるエリアです。
そのため多言語に対応した広告を掲載すれば、効果的にホストクラブの利用を促せます。
ホストクラブを探している人はもちろん、他の目的でたまたま通りかかった旅行客が気になって利用するきっかけにもなります。
また日本語の広告が並ぶ中で、多言語に対応したホストクラブがあれば注目を集めるのは明らかです。
多言語広告があまり普及していないエリアであれば、大きなアドバンテージになるでしょう。
看板広告の種類や費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
SNSを活用して外国人向けに発信
訪日外国人は旅行に際して、SNSで情報収集を行う人が非常に多い傾向です。
加えて近年ではSNS上での拡散によりホストクラブの認知が広まっている背景から、SNSは相性が良い集客媒体と言えます。
そのためSNSを活用して訪日外国人に向けた情報を発信することで、訪日予定の外国人旅行客に自店をアプローチできるでしょう。
SNSの具体的な運用・活用方法についてはこちらの記事を参考にしてみてください。
キャッシュレス決済の導入
キャッスレス決済の導入は利便性の向上だけでなく、インバウンド対策としても効果を発揮します。
なぜなら海外ではキャッシュレス決済の普及率が日本よりはるかに高く、現金を持ち歩かない人が多いからです。
もちろん海外旅行に際してはキャッシュを用意するという人もいますが、現金を持たない観光客は増えています。
それにホストクラブは一般的な飲食店に比べると料金設定が高く、利用しようと思っても持ち合わせが足りないということもあるでしょう。
つまりキャッシュレス決済を導入していれば、現金の持ち合わせを理由に訪日外国人客の利用の機会を損なわないというメリットがあります。
海外の女性向けサービス事情から得られる集客のヒント
海外の女性向けサービス事情を見ると、日本のホストクラブのインバウンド集客にも活用できるヒントがあります。
3つほどご紹介するので、インバウンド対策に取り組む際の参考にお役立てください。
多言語対応はアジア圏が重要
海外にホストクラブはほとんど存在しないものの、近年アジア圏を中心に進出している背景から特にアジア人に需要が高いサービスだと判断できます。
また「日本政府観光局(JINTO)」が公表している訪日外客数によると、2024年1月~6月の半年間における訪日外客数の上位3ヵ国は韓国・中国・台湾のアジア圏であることが分かります。
国・地域 | 総数 |
---|---|
韓国 | 4,442,100 |
中国 | 3,068,000 |
台湾 | 2,979,200 |
その他 | 7,287,900 |
出典:日本政府観光局(JINTO)訪日外客数(2024年6月計測値)
そのため外国人客の受け入れの準備に際しては、ホストクラブの需要が高く訪日外客数の多いアジア圏の言語を優先して抑えておくと良いでしょう。
例えば、多言語の広告・メニュー表の用意や、言語を話せるホストの育成・求人など。世界で最も話されている言語である英語に加えて、韓国語や中国語での準備をしておくのは効果的なインバウンド対策と言えるでしょう。
シャンパンタワーやシャンパンコールがウリになる
前述したように、欧米圏ではストリップクラブや性風俗店といった刺激が強いサービスが好まれる傾向です。
ただし日本のホストクラブにおいては法律上、性的サービスを提供できません。加えてショーパブのように歌やダンスを提供するのも難しいが、ショーという観点であればシャンパンタワーやシャンパンコールが類似したサービスと言えるでしょう。
そもそも外国人がホストクラブに訪れる目的を考えると、日本人女性のように「癒やされたい」ではなく日本文化の観光といった意味合いが大きいです。
そのため外国人接客では会話を重視するより、パフォーマンスを提供する方が満足してもらえる可能性が高いと考えられます。
実際に日本のアニメやドラマで見るような華々しいホスト像を抱いている外国人客も多いので、シャンパンタワーやシャンパンコールがウリになるでしょう。
SNSとの相性も良く、写真や動画形式での拡散も見込めます。
お酒だけで売上を立てない
海外で提供されている女性向けのサービスを見てみると、日本のホストクラブのようにお酒のみで売り上げを立てるサービスは珍しいです。
そのため実際に日本のホストクラブを利用した外国人客からは、お酒の値段が高額だと感じる趣旨の口コミが多く見られます。
そこで高額なお酒を煽って売上を立てるのではなく、お酒を含む外国人向けのコースとして提供してみれば値段に対する不満を軽減できるかもしれません。
「お酒 + シャンパンコール・シャンパンタワー + 案内・ガイド」のようなサービスをセットにしたコースとして提供すれば、日本文化の体験として利用を促せるでしょう。
外国人客の受け入れにおける注意点
外国人客の受け入れにおける注意点をご紹介します。
インバウンド集客を検討している方は、確認しておくと良いでしょう。
ルールやサービス内容を事前に説明しておく
ホストクラブは海外にほとんどないため、ルールやサービス内容を事前に説明するようにしましょう。
料金面や法律に関する禁止事項をはじめ、ホストクラブならではの暗黙のルールなど。
場合によっては法律に違反してしまったり、既存客とのトラブルを引き起こしたりする可能性もゼロではありません。
トラブルを未然に防ぐためにも、外国人客に対しては丁寧にルールやサービス内容を説明しておきましょう。
決済手段を確認しておく
外国人客が来店した際には、サービスを提供する前に決済手段を確認しておきましょう。
なぜなら外国人客が想定している決済手段に対応していない場合もあり、支払いができない可能性もあるからです。
例えばお客様がクレジットカードで決済をするつもりであっても、ブランドに対応していない可能性があります。
またホストクラブでは会計が高額になりやすい傾向にあり、外国人からするとお酒の値段は想定以上に高価。現金で払うつもりでも、持ち合わせが足りなくなってしまう可能性もあるでしょう。
店舗側としてもただ酒を煽るのではなく、外国人客に対しては決済できるかを判断しながら注文を取る必要があります。
宗教や文化の違いに配慮する
外国人客を接客する際には、宗教や文化の違いから食べ物やマナーにも配慮しなければなりません。
例えば、イスラム教では豚肉やアルコール、ヒンドゥー教では肉類や魚類、キリスト教では酔っぱらうこと、などが禁止されています。
もし宗教や文化的にタブー行為を犯してしまうと、大変な事態になりかねません。
そのため多言語で飲み物やつまみのメニューを作成しておいたり、翻訳機を使って都度説明したりなどの配慮をしましょう。
まとめ:ホストクラブはインバウンド需要が高いサービス
日本のインバウンド市場は活性化しており、ホスト業界も例外ではありません。
海外では日本文化として認知が拡大している背景もあり、ホストクラブのインバウンド需要は高まっています。
インバウンド対策に取り組んでいる店舗も増えているため、今後さらにホスト業界のインバウンド市場は拡大していくでしょう。
外国人客を取り込んで売上を向上させたいと考えている方は、ぜひ本記事を参考にインバウンド対策を検討してみてください。